オフィス移転祝いのマナー
移転祝いとは
企業がオフィス・店舗を移転したことに対するお祝いが「移転祝い」です。移転はいわば新しい門出。そんな門出を華やかに祝福するためにギフトを用意します。
移転祝いをすることで、「おめでとう」という気持ちと同時に「これからも継続してお付き合いしたい」「今後の発展を願っている」といった気持ちを伝えられます。
では、移転祝いは何を贈るといいのでしょうか?
受け取る取引先に喜ばれて、できれば自社のイメージアップにつながるようなものがベストです。数ある移転祝いの中から、納得のいく移転祝いを選びましょう。
ただし、移転祝いには、マナーがあります。移転祝いを贈らないケースもあるので、注意してください。ここでは、移転祝いのマナーやおすすめの移転祝いを紹介します。
移転祝いを贈らないケースは?
事業縮小をするケース
移転の理由によっては、お祝いをすると失礼なケースがあります。事業を縮小あるいは撤退するケースです。事業の縮小は、企業にとって決して喜ばしいこととは言えません。お祝いが不適切なケースでお祝いをしてしまうと、企業イメージや信頼を損ねてしまう可能性があります。
移転のお知らせを受けたときは、その移転がおめでたい理由での移転かどうか確認して、お祝いがふさわしい移転の場合にお祝いをするようにしましょう。
移転祝いを辞退しているケース
移転の理由にかかわらず、移転祝いを辞退している企業も少なくありません。接待や賄賂などを防止するためです。コンプライアンスで移転祝いの受領を禁止されていることがあるので、移転祝いを辞退する旨の申し出がある場合は、移転祝いを贈らないように気をつけてください。
辞退している場合は、移転のお知らせの際にその旨が書き添えられていることが多いですが、分からない場合はお知らせを受けたタイミングでお祝いしてもいいか確認しておくと安心です。
オフィス移転の移転祝いはいつ送る?
オフィス移転のお祝いをするタイミングに悩むかもしれません。企業によっては、移転パーティが行われることがあります。パーティが開催されるのであれば、開催当日持参します。パーティが行われない場合も、移転祝いが届くのは、移転当日がベストです。
移転当日に届けられない場合は、移転から2週間以内を目安にしましょう。移転当日より前は、慌ただしい時期のため避けてください。他の業者の出入りも多く、社員が必ずいるとは限りません。移転前日であれば問題ありませんが、移転日の前々日より前は避けましょう。
移転日から2週間以内に間に合わない場合はどうすればいいでしょうか?
もし遅れた場合は、1ヶ月以内であれば、移転祝いを贈っても問題ありません。移転から1ヶ月ほどで先方はお返しの準備を始めます。できるだけ早く贈るのがマナーです。移転日に近いほどお祝いの気持ちが伝わりやすくなります。できるだけ2週間以内にお祝いするようにしたいです。
とはいえ、移転祝いを贈る側の企業にも都合があります。何らかの事情で1ヶ月を過ぎてしまう場合は、手紙でお祝いのメッセージを送るようにしてください。1ヶ月を過ぎると、先方はお返しの手配をしてしまっています。遅れてお祝いの品が届くと迷惑になるため、1ヶ月を過ぎてからは、お返しが必要なお祝いを避けるのがマナーです。お祝いの品を送るのではなく、お返しが不要な菓子折りの持参をおすすめします。
オフィスの移転祝いにおすすめの贈り物は?
オフィスの移転祝いにおすすめの贈り物①:胡蝶蘭
移転祝いで贈られることが多いのは、胡蝶蘭です。移転祝いの定番と言えるでしょう。胡蝶蘭の花言葉は「幸せが飛んでくる」。「根付く」という意味もあることから、幸せが根付くというメッセージを伝えられます。
ただし、花は手入れが大変なことや枯れてしまった後の処分にお金がかかるという理由で、実は人気がありません。定番でもあることから、気の利いたお祝いの品という印象も与えないため、マイナスにはならないもののお祝いした側の企業のイメージアップにもならないでしょう。お付き合いの程度によって検討することをおすすめします。
オフィスの移転祝いにおすすめの贈り物②:観葉植物
オフィスに観葉植物があると、社内が明るくなり、社員のストレスも緩和されます。花より観葉植物の方がお手入れも簡単で、社員には喜ばれるでしょう。パキラは「商売繁盛」、ガジュマルは「健康」など、観葉植物にも花言葉があります。
大きな観葉植物もいいですが、贈りやすいのは、卓上サイズの大きさの観葉植物です。共有スペースなどに置いてもらえます。来訪時にも手渡せるので、移転祝いに贈りやすいギフトといえるでしょう。
オフィスの移転祝いにおすすめの贈り物③:食べ物
形がなくなるものも移転祝いにはおすすめです。残る物は、オフィスデザインに合わないとかえって迷惑がられてしまうことも。食べ物なら、食べてしまって後に残らないため、失敗がありません。
食べ物を贈る際は、四葉のクローバーやフクロウをモチーフにしたお菓子など、縁起の良いお菓子を選ぶのもおすすめです。調理や切り分けが必要のない、休憩中に気軽に食べられるものを選ぶといいでしょう。持ち帰って自宅で楽しめるビールなども人気です。
オフィスの移転祝いにおすすめの贈り物④:カタログギフト
品物を贈るには、相手のニーズを知っておかなければ失敗する可能性が高いです。何が喜ばれるが分からない場合は、カタログギフトをおすすめします。カタログの中から選んでもらえるので、間違いがありません。Webで完結するため、贈るのも簡単です。
ただし、カタログギフトは、贈り手がプレゼント選びを放棄しているため、「目上」の立場へ向けてのギフトとしては失礼にあたります。関係性には注意してください。
オフィス移転の移転祝いで贈ってはいけないものは?
お祝い事にふさわしくないとされている物は、贈らないように注意してください。例えば、包丁などの刃物は「縁を切る」という縁起の悪いことを連想させるため、NGとされています。
他には、火事を連想させるキャンドル・ライターなどの火関連製品、赤字を連想させる赤色のアイテム、踏みつけることを連想させる履物・敷物もNGです。
また、少々こじつけですが、ハンカチは漢字で「手巾(てぎれ)」と書くため、縁切りを連想させるためお祝いでは良くないとされています。
最近は、あまり気にしない人も多くなっていますが、目上の人の中には気にする人も少なくありません。せっかくのお祝いなので、縁起が悪いとされているアイテムは避けた方がいいでしょう。
オフィスの移転祝いの相場は?
オフィスの移転祝いは、関係性に応じた価格帯の物を贈ることが大切です。取引先の場合は、3万円~5万円程度。お付き合い程度の企業なら1万円~2万円が相場とされています。重要な取引先の場合は、相場より1ランク上のものを贈ることで他社に差をつけられます。
友人・知人への移転祝いなら、5,000円~10,000円が相場です。オフィスの雰囲気に合わないと迷惑になりかねません。移転先の内装を詳しく知らない場合は、カタログギフトや商品券が無難です。
身内なら2万円~3万円、親戚は1万円~2万円を相場と考えてください。身内・親戚は、現金が良いでしょう。移転はお金がかかるので、実のところ現金が一番ありがたい贈り物です。身内だからこそできるお祝いと言えるのではないでしょうか。
オフィスの移転祝いの熨斗(のし)の書き方は?
水引は、紅白の蝶結びを選んでください。のし紙は、右上に六角形の飾りがついているものが良いとされています。
のしは、紅白の蝶結びの水引を中心に、「のし上」と「のし下」に分けて考えます。「のし上」には「御祝」「御移転御祝」を、「のし下」には贈り主の名前を書いてください。企業として贈るなら「会社名」を、会社の代表として贈る場合は「会社名+個人名」を書きます。
胡蝶蘭や観葉植物を贈る場合にのしの役目をするのは、立て札や祝札です。立札にはお祝いの言葉と送り主名を記載します。
一般的にのしは業者が書いてくれるため自分で書くことはないでしょう。自分で書く際は、筆ペンやフェルトペンで書きます。本来は毛筆が正統な作法のため、腕に覚えがあるなら毛筆がベストです。ボールペンはマナー違反のため避けてください。
移転祝いのお返しをもらったら
移転祝いをすると、お祝い返しをもらうことがあります。お祝い返しに対してさらにお礼をする必要はありません。お祝い返しにお礼をすると逆に失礼になってしまうため、気を付けてください。お祝いを受け取ったからお返しをしたのに、それに対してまたお返しが届いては、受け取る側が困るのはもちろん、エンドレスになってしまいます。お礼にお礼を返すのはやめましょう。
ただし、お祝い返しを受け取って放置すると、先方は届いたかどうか不安になってしまいます。そのため、手紙もしくははがきで返事をしましょう。電話やメールでは失礼になってしまうので注意してください。
移転のお祝いは「気遣い」を大切に
移転のお知らせを受けたら、お祝いをして良いか確認してください。移転の理由が縮小・事業廃止ではなく、お祝いの辞退もしていないようなら、関係性にあったお祝いを贈りましょう。お祝いの相場は、取引先なら3万円~5万円、お付き合いなら1万円~2万円です。高いほど良いというものではありません。関係性にふさわしい贈り物を検討してください。
移転のお祝いは、気遣いが何より大切です。日ごろの感謝や今後も良い関係を継続していきたいという気持ちが伝わるよう、気遣いや配慮のあるお祝いを贈りましょう。