インナーブランディングとは?定義やメリットを解説
インナーブランディングとは?
「インナーブランディング」は、「インターナルブランディング」とも言われ、社内に向けたブランディングです。従業員に対して、企業の理念やビジョン、価値観を共有し、「自分が働いている会社はこういうブランド」という意識を定着させる活動と言えます。
「ブランディング」というと、社外に向けたブランディングのことを指すのが一般的です。社外の取引先や消費者に向けたブランディングは、インナーブランディングに対して「アウターブランディング」と言います。
アウターブランディングでは、他社との差別化を行い、自社の商品・サービスを利用する動機づくりが目的です。企業の取り組みやブランドの魅力を伝えることで、ファンを獲得します。消費者をファン化できると、1度きりの利用ではなく、リピートが期待できます。アウターブランディングは、売上や利益の向上には欠かせません。
アウターブランディングを成功させるポイントは、インナーブランディングにあります。従業員が企業やブランドの理念・ビジョン・価値観をベースにした企業活動をおこなってこそ、一貫したイメージの構築ができるのです。広告やホームページ、SNSの担当者が共有しているだけでは、アウターブランディングは完成しません。「ブランディング」を成功させるには、土台となるインナーブランディングからスタートする必要があります。
インナーブランディングと似た言葉で区別がつきにくいのは、「インナーマーケティング」です。マーケティングは、仕組みの構築を目指す活動のことを全般に指します。インナーマーケティングにおいては、従業員と経営陣の会社に対するイメージギャップを把握し、従業員の意識や価値観を理解した上で、企業の理念やビジョンを浸透させていく仕組みづくりを行います。インナーマーケティングによって把握できたことを元に、インナーブランディングを実施するという流れです。ただし、インナーブランディングとインナーブランディングを区別せず、同じ意味で使われていることもあります。
インナーブランディングのメリット5選
企業理念や会社方針について理解が深まる
従業員の中で、自社の理念や経営方針が明確になることがインナーブランディングの大きなメリットです。判断に迷う場面があっても、自分が取るべき行動が分かります。従業員それぞれが個別に判断しても一貫性が保てるため、サービスの品質が安定します。
また、理念やビジョンを共有しているため、経営陣と従業員、そして従業員間での意識のズレや誤解がなくなり、不満が生じにくいこともメリットです。仕事への不安が解消され、ビジョンを実現するために企業に貢献したいという意識を育てることができます。
従業員の満足度やモチベーションの向上
自社のビジョンに共感したときに芽生えるのは、会社やブランドへの誇りや愛着です。「この会社で働いているのだ」という満足感を得て、仕事に対するモチベーションが向上します。
また、自社が目指していることやその中での自分の役目などが明らかになることで、仕事がしやすくなるというメリットも見逃せません。行動指標ができるため、自発的な行動が期待できます。
生産性の向上
従業員のモチベーションが向上し、自発的に仕事をできるようになれば、生産性が向上します。インナーブランディングで共有したビジョンは、行動の指標にもなるので、判断が必要なときに迷いが生じません。迅速な対応ができるようになります。
社内に連帯感が生まれ、協力体制が強化されることによる生産性アップも期待できる効果です。自社をより良くしたいという意識から、個々の積極性も育つでしょう。改善点も見つかりやすくなり、ますます生産性が向上するという良いスパイラルが構築できます。
ブランドイメージ向上
従業員にビジョンや価値観が浸透していれば、営業先との商談や顧客対応、SNS発信の際に、ブランドイメージを正しく伝えたり、ブランドイメージに沿った行動ができたりします。
自社や商品への愛着をベースにメッセージを伝えれば、その熱意が顧客に伝わりやすいです。ブランドイメージを壊すような行動は自然と避けるでしょう。その従業員の姿勢が好印象や満足度に繋がり、ブランドイメージの向上にも繋がります。
優秀な人材が確保できる
企業のビジョン・価値観が共有できると、共感した人材が集まりやすくなります。誇りをもって仕事に取り組めることから、定着率が向上。新規採用の際も他社との差別化が明確になり、方向性やビジョンに合った優秀な人材の応募が期待できます。
新人に対しても質の高い指導が行き届くのも、社内の協力体制が構築され、従業員が高い意識で仕事に取り組んでいる企業だからこそ。優秀な人材が定着するため、採用にかかるコストの削減効果も期待できます。
インナーブランディング実践のポイント
予算を確保する
インナーブランディングは従業員に対する取り組みですが、コストがかかります。どのような取り組みであっても新しいことを始めるときはコストがかかるもの。それが企業の土台につながるものであるなら、しっかりと計画を立て、予算を確保することが大切です。
インナーブランディングにおいて、コストがかかるのは、「会議や社内イベントなどでかかる人的コスト」「ブランディングに必要な制作物・ツールなどの導入コスト」「Webサイトやメルマガ、SNSといったインターネットツールの運用コスト」「オフィスのレイアウト変更コスト」などがあります。また、インナーブランディングの専門的なノウハウを外部から提供してもらう場合は、そのコストも必要です。
十分な予算が確保できないと、施策が中途半端になり、一貫性のあるブランディングが行えません。インナーブランディング成功までの道筋を計画して、必要な予算を確保しましょう。
内容を明確にする
インナーブランディングの最初の一歩は、企業理念やビジョン、ブランドコンセプトの明確化です。従業員が具体的にイメージできるよう言語化しましょう。数字で表現できるものは数字を使うと、明確に伝わります。人によって受け取り方が異なる抽象的な言葉ではなく、具体的な言葉を使ってください。
曖昧な表現でインナーブランディングに取り組むと、人による認識のズレや迷いが生じてしまい、従業員にとって大きなストレスになります。自社への愛着どころか不信感につながりかねません。
また、実現の可能性が低いビジョンや目標も、士気を下げるため避けましょう。一方的な価値観の押し付けにならないよう、従業員の気持ちに沿ったビジョンを定義することが大切です。
中長期間取り組む
インナーブランディングは、取り組みをスタートしてすぐに効果が出るわけではありません。取り組みには、中長期的な計画が必要です。理解が浸透しないまま社訓を暗記させたり朝礼で唱和させたりしても、かえって反発につながりかねません。
アンケート、業績・定着率などの数字の調査など、定期的な効果測定を行いながら、必要に応じて問題点を改善していきましょう。実践と改善を繰り返すことで、インナーブランディングの取り組みが習慣化し、徐々に企業やブランドのビジョン・価値観が浸透していきます。
ビジョンや価値観が企業文化として定着するまで、目先の結果ではなく長期的な目標として取り組んでください。