今まで接点がなかった社員同士の
コミュニケーションが活性化した事例
オフィス環境において、従業員が多いほどコミュニケーションが難しくなってきます。今回は移転前はフロアが分かれていたオフィスを、移転を機にフロアを統一し、フリーアドレス化、さらに個性的なコラボエリアを作ることで、従業員同士のコミュニケーションが活性した「株式会社サンエー印刷」にインタビューを行いました。
個性あふれるコラボエリアが従業員の距離を縮めた
「株式会社サンエー印刷」のオフィス改革
移転前は別フロアの従業員との交流がほぼなかった
編集(以下「編」).まず、御社がティーズブレイン様に依頼する前に、抱えていたオフィスに関する課題についてお話を聞かせてください。
元々は大塚に本社がありまして、約30年近く同じビルに居ました。移転前の課題は、7階建ての賃貸ビルの5フロアを借りていたのですが、フロアごとでコミュニケーションが取れない、各フロアでいわば別会社のようになってしまっていたという点です。
編.別の会社になってしまうというのは、交流がほぼほぼないというような状態でしょうか。
はい。人によってはまったく行ったことのないフロアがあり、名前も顔も分からない人がいる、そのような状態となっていました。
編.そのような中、移転によりどのような施策を行ったのでしょうか。
まず営業をフリーアドレスにすると決めました。また、工場と一緒にできる部門の統合を図りました。そうすることで今までの5フロアから、約2.5フロア分減らすことができると分かり、1フロアに統一することができました。
編.実際にフリーアドレスにして営業の方の反応はどうでしたか。
フリーアドレスになったことによって、違う部署の従業員たちや違うグループの人たちとやり取りをするようになり、コミュニケーションがすごく増えましたね。
編.それはとても良い傾向ですね。
フリーアドレスがなければこうはならなかったと思います。今までは第一営業、第二営業、第三営業といったグループがあり、その一つの部隊の中だけで話をしていたんです。
それが先輩後輩関係なく、出社した順に自分の好きな所に座りますので、その日によって隣や前の人が変わり、部署関係なく従業員のつながりが大きくなってきていきました。
キャンプ風のコラボエリアでさらにコミュニケーションが活性
編.私も御社を訪れてすごく素敵なオフィスだなと感じました。特にキャンプ風のエリアはビックリしました。このようにした意図やこだわりについてお聞かせください。
世の中がコロナという部分で思いきり変わった状況下で、従業員が"会社に来る意味"というものを、きちんと持たせなければいけません。
それを実現するために、私共はコラボスペースと言っているのですが、みんなが集まって話をしたり、食事したり、あと実際に夜はお酒を飲んだりできるスペースということで、ちょっとした異空間を作りました。
編.なるほど。
また、別の意味でいうと、キャンプ風のスペースというのは座って過ごすことになります。目線を変えると考え方が変わるわけですよね。それ以外にもカフェスペースがあったりスタンディングスペースがあったり、それぞれ目線を変えた状態の席を用意しています。そうすることでアイデアが生まれると考えています。
また、普段は話さないような人たちとのコミュニケーションができるようにしたのが、今回このコラボエリアの一つの目玉ですね。
編.私は雲梯(うんてい)があるのには驚きました。
もうこれは童心に返る(笑)ことが目的です。子どもの頃の雲梯で遊んだことをそのまま再現したくて、完全に作り込みをお願いしました。従業員の健康のことを考えてなんですけれど。
編.実際にやられている方はいらっしゃいますか。
昼休みに利用している社員がちらほらいます。
編.やっぱり子どもの頃と違いますか。
そうですね、懸垂を2、3回やると、もう大変ですね(笑)。
編.全体を含めて従業員の皆さんの評判はいかがでしょうか。
大好評、大興奮。特に月2回ですけれども、総務主催のナイトラウンジというイベントを開催しています。そこでお酒やケータリングを食べながら、普段話さないような人たちが一緒になって話をしています。
従業員満足度だけでなく顧客や採用にも効果を発揮
あとはお客様に工場見学をしてもらったあとに、夕方コラボスペースで食事会を開くとか、そういうことによって、普通のお店ではできない交流ができるという点が非常に好評です。
編.ですよね!
採用に来る学生さんもやっぱりこのオフィスを見て、「すごい!」とびっくりされる方が非常に多いです。
ちょっとした工夫で風通し見通しの良さを実現
編.その他オフィス全体としてこだわって作った点はございますか?
一つは、全体の見渡しをよくするためにハイキャビネットを置かなかった点。社長室もガラス張りにして、全部見通しを良くして、みんなが分かるフロアにしました。
また、当社は絵がたくさんあるため、美術館的な扱いができるように壁を作って、飾っているところも特徴かもしれないですね。
編.社長室をガラス張りにしたことで従業員の方との距離は縮まりましたか。
今まではパーテーションで区切られていたので、従業員としては入りにくいですし、何をやっているのか分からないような状態でした。しかし、今や私は金魚鉢の中の金魚状態で、従業員は金魚を見るように私を観察して、僕も外の世界を見ると(笑)。
あとは自分が毎日出社したい会社にしたので、そういう意味では自分にとって居心地が良いです。
編.従業員の方も同じような反応でしょうか。
この本社が移転したときに「今までの自分たちの会社じゃない」「信じられない」という言葉が従業員から出ました。あとは「いわゆる印刷会社の事務所ではない」「IT業界の事務所に見える」「トレンディドラマに出てくるような事務所だ」という言葉がたくさん出ましたね。
編.出社したくなるオフィスを実現したということですね。
エリアごとに名称を付ける遊び心も
あとは、それぞれのエリアに名称を付けました。例えば、焚き火エリアには「Takibi(焚き火)」、社員がよく集まるパントリーエリアには「Ikoi(憩い)」、揺れる椅子を集めたエリアには「Yuragi(揺らぎ)」といった名称を付けました。このアイデアは、このビルに移転してきたばかりの時に、このオフィスを見た社員が意見を出し合い考えたものです。
そうすることで、打ち合わせをするときに、今日は「Ikoi」でやろうかとか、エリア名で呼び合うようになりました。
他にも、一部の部屋には都市名が入っている所もあります。
ティーズブレイン様にこのオフィスを作っていただくときに、この床のカーペットのシリーズが、たまたま都市名だったので、じゃあその名前にしようと。「ニューヨーク」「バルセロナ」という名前にしました。部屋の入口のプレートには、ちょっとした遊び心で、さりげなく小さい文字でその都市名を入れています。
編.今までだったら単純に「会議室で」というところですよね。
来社されるお客様も、「今日はここで打合せをしたい」ですとか、そういう風に指定がある場合もありますよ。
編.そういうことで自然と気持ちが明るくなるというのがありますね。
この空間を活かして仕事の効率をあげていって欲しい
編.今後従業員の方々に、このオフィスを通して期待されていることはございますか。
働き方の工夫です。会社にいる時間は8時間あるわけで、その時間をうまく活用して欲しいと思っています。うまくこの空間を使って効率を上げていく、そういった働き方を期待しています。
今まではパソコンを見ながら思考していたところを、このような空間があることで、今までとは違うアイデアが生まれてくると考えています
編.実際にアイデアの点での変化はありますか。
例えば、ひとりが「こういうものに興味があるんだけど」と話をすると、違う人間が「じゃあこういうのはどうなの?」というようなアイデアの会話が頻繁に生まれて来ました。
自分たちにないたくさんの引き出しから
より良い提案をしていただきました
編.この移転プロジェクト全体を通してティーズブレイン様への対応はいかがでしたか。
こちらが考えたことに対して具体的にイメージを強く出してくれました。こちらの話を聞いて、きちんとその要望に応えるという部分もあるのですが、そうじゃない引き出しの多さを感じました。
ですので、今は埼玉工場の改装も同じように続けてやってもらっています。
編.期待する以上のものの提案をしてくれたということですか。
そうです。照明のアイデアも「絵を照らしたい」というのは私が言いました。ティーズブレイン様はそれに加えて、照明の位置も変えられたり取り外しができたりするということも提案してくれました。
また、社長室に、前にしか進まない勝ち虫の意味がある「トンボ」をモチーフにしたいという話をしたときに、このような物はいかがでしょうというアイデアを出していただきました。そういうところが非常にありがたく感じました。
取材協力:株式会社サンエー印刷
- 所在地:東京都北区田端6-1-1 田端ASUKAタワー17階
- 設立:昭和56年(1981年)7月17日

代表取締役社長 竹下 仁氏
エビデンスに基づいた
提案でオフィス縮小を実現
株式会社ティーズブレインは、オフィス移転を通して従業員へ会社の理念浸透やエンゲージメント向上等をコンサルする企業。株式会社サンエー印刷のオフィス移転に携わり、キャンプ風のコラボスペースや雲梯など独創的なご要望にも柔軟に対応しました。移転を通してオフィス全体のコミュニケーションの活性化に寄与しました。

代表取締役社長 竹下 仁氏